――東南アジア最大のビール消費国
ベトナムが東南アジア最大のビール消費国であることをご存知だろうか。
人口の大部分がビール愛好家であるとまで言われており、街中には、屋台型というか、ビアガーデンのようにオープンエアーで生ビール飲みながら食事ができる場所が多数あり、いつも賑わっている。
ベトナムではビールのことをビアホイと呼ぶ。
屋台で飲む生ビールは通常のビールよりも多少アルコールが薄められているのが相場だ。
ビール消費力の高いベトナムに対しては、地元のみならず、世界の醸造投資家が、ここでのビールビジネスを後押ししようと懸命になっている。
サイゴンビール・アルコール飲料総公社(Sabeco)はベトナムで最大のシェアを誇るビール会社だが、国内の醸造所の拡大に力を注いでいる。
最近では年間5000万リットルのビール醸造を目標にメコンデルタ地域にあるサイゴン·キエンザン醸造所への投資を行った。
Sabecoは2013年末にも、カントー市と中央ビントゥアン省の2か所でも同様のプロジェクトを始動している。
どちらも年間5000万リットルのビール生産能力のある醸造所になる。
増産に向けて他にも複数の新規プロジェクトが進行している。
Sabecoのライバルであり、業界第2位のハノイビール・アルコール飲料総公社(Habeco)もフート、ハイフォン、クアンニン、ナムディン、タインホア、クアンビンなど、北部から中部にかけて12か所の醸造所を開設する予定だ。首都ハノイと南部ビンズオンにも醸造所の開設を計画している。
ハノイビール・アルコール飲料総公社(Habeco)の主力商品BIA HA NOI(ビア・ハノイ)
――日本メーカーも参入、海外からの積極的な投資
海外からのベトナムビール市場への投資も急増している。
デンマークのカールスバーグは現地業者数社と提携して醸造所への投資を行っている。
アメリカのバドワイザーも近々参入予定だという。
日本のビールメーカー、サッポロ・ベトナムは4200万米ドルをロンアン県に投じ、製造量を現状の4000万リットルから1億リットルへ増加させる予定だ。
社長の岸裕文氏によると、メコンデルタ地帯の隣の県まで範囲を広げていきたいとのことだ。
ベトナムのビール市場が激化し始めている理由として、地元のビール消費量の増加もそうだが、自由貿易協定(TPP)締結を見据え、関税撤廃の期待感が膨らんでいることが挙げられる。
現在の輸入ビールには45%の輸入関税、50セントの消費税、10%の付加価値税がかけられている。TPPを締結すれば、これらが免税になるのだ。
ベトナムビール・アルコール飲料協会の速報によると、人口9000万人のベトナムにおける、2013年のビール消費量は前年同期比の10%増、約30億リットルであった。
ちなみに日本のビール消費量は約55億リットルと世界第7位である。
ベトナムでのビール消費量は、継続する経済的な混乱を考慮したとしても、前年比+5%の増加は固いだろうと言われている。
――アジアトップのビール消費国へ
日本における1人あたりのビール消費量は年間43.5リットル、500ml缶にして87本分になるが、ベトナムでは、年間1人あたり32リットルのビールが消費されている。
ベトナムは中国、日本に続いてアジアでのビール消費が多い国であるが、世界におけるビール消費量上位20カ国の中で、最も平均所得の低い国でもある。
国民の中位年齢が28.5歳と若く、今後の経済成長が見込まれるベトナムでは、所得の上昇に応じて、さらにビールの消費が伸びるものと予想される。
人口差の大きい中国をビール消費量で追い抜くのは難しいが、10年以内にアジア2位の日本を超えるビール消費国となる可能性は十分にある。
一人あたりの消費量で言えば、アジアトップになるのも夢ではない。