日本に住むムスリムの皆さんの座談会。今回は前回に引き続き「ハラール(Halal)」について、主に日本での食事をテーマにお話を伺います。
ムスリムの皆さんが日本へ来て、まず覚えた漢字が「豚」と「酒」。そして、さらに気を付けなければならないものがあると知った三人。日本での食生活をどのようにされているのか、もう少し詳しくお伺いします。
■参加者プロフィール
「牛肉」「チキン」であれば全てOKというわけではない
― ムスリムの方たちはまず「豚」や「酒」、動物由来の「乳化剤」や「ゼラチン」が含まれているものが食べれないとわかりました。他には何がダメですか?
アフア:牛肉やチキンなどのお肉は食べることができますが、イスラムのルールで処理された肉じゃないと食べないです。
カジ:豚以外の肉はすべてOKではなく、チキンや牛肉でも病気などでトサツする前に既に死んでいたり、病気だったものは、その後にイスラムのルールで処理されたとしても食べてはだめです。頸動脈を鋭利な刃物で切って、できるだけ苦しまない方法でトサツするのがイスラムのルールです。ハラールの肉は、祈りを唱えながらトサツすればOKというわけではありません。
なぜ豚肉はだめですか?と聞かれたことがあります。豚もイスラムのルールで処理すれば食べられるのではないかと。でも、豚は何でも食べて、汚いものも食べます。そういうイメージ的に汚い動物で、私たちは食べてはならいないのです。例えば、カラスも何でも食べます。カラスを食べれますか?と日本人に聞くのですが「食べれない!」と言います。それと同じなのです。私たちもカラスは食べてはいけないものです。鳥でも肉食の鳥は私達は食べません。例えばイーグルとかは肉食なので、だめです。鳥だけでなく肉食の動物の肉は、すべて食べません。牛や鶏などの草食の動物の肉だけを食べます。
群馬県や品川にハラール肉のトサツ場があって、群馬県の方はパキスタン人の方がやっています。そこの牛肉はおいしいです。
― 牛肉や鶏肉だから何でもOKというわけではないのですね。日本にはムスリム向け(ハラール専門)レストランはありますか?
全員:んー、日本では少ない・・。
アフア:ありますが、少ないです。私は、トルコ料理とか、インド料理やインドネシア料理に行きます。
カジ:渋谷にあるトルコ料理のお店は、全てハラールです。たまに、チキンだけがハラールで牛肉がハラールじゃないというお店もあります。わたしたちは一般的なレストランで出されるチキンや牛肉は、ハラール肉ではないので一切食べません。
― 自分で肉料理を作るときは、どうされていますか?
アフア:私はインターネットで、ハラールのお肉を買っています。
ノザ:私も同じです。オーストラリアから輸入されたお肉で、*ハラールマークがついています。
(*ハラールと認められた製品に、ハラールマークが付与される)
カジ:私はインターネットではなくて、直接買いに行っています。ハラルフードを売っているお店で蒲田の方にあります。それと御徒町や大久保、横浜にもあります。あと、コストコにもブラジルの肉ですがハラールの肉が売っています。
― お肉の話がでましたが、魚や野菜はどうですか?
アフア:野菜は植物なのですべて大丈夫です。魚もすべて大丈夫です。
カジ:海のものだったらなんでも大丈夫です。刺身もOKです。
アフア:海藻も貝も、海で採れるものだったら全部大丈夫です。
食材がOKでも、調味料の問題があるということ
― そうすると、魚と野菜の料理であれば、日本にある一般的なレストランでも食事ができますか?
アフア:それが、調味料の問題があるのです。
カジ:「日本酒」が入っているとだめです。焼き魚のように、塩だけで焼いたものだったら大丈夫です。
ノザ:「みりん」が入っている場合もだめです。「みりん」にアルコールが入っているので。調味料の中にアルコールが入っているものは全てダメです。
カジ:日本のものだと、「牛脂」が入っていたり、動物由来のものが含まれる調味料もだめです。日本の牛は、イスラムのルールで処理されていないので、その「牛脂」を食べることができません。だから動物由来のものが含まれている調味料は全般的にだめです。動物性のものは、イスラムのルールに従って処理されたものしか口にすることはできません。
ハラール(ムスリム向け)の店に売っている調味料は、「牛脂」が入っていても、イスラムのルールで処理された「牛脂」を使っているので大丈夫です。私達は小さい頃から知っていますが、知らない人が聞いたら最初は混乱するかもしれないですね。
日本人の友人がいるのですが、彼は私の食べてよいものと、食べてはいけないものをよく知っていて、食べるものは彼が選んでくれます。材料に含まれているものを見て、これは大丈夫、これはダメと選んでくれるので、今は私よりも詳しいです(笑)
ノザ、アフア:(二人笑う)
コンビニで売っているある食べ物がムスリムに人気!
― 調味料も気を付けなければならないと、日本のもので食べれるものは限られてきますね。外食の頻度はどれくらいですか?
アフア:一ヶ月に1回ぐらいです。お昼は会社にお弁当を持っていきます。外食に行った場合には、何が入っているかお店の人に聞いてみます。
ノザ:ほとんど自分で作ります。外食は友達と一ヶ月に一回くらいです。でもその時は、何を食べるか聞いてから行きます。いろいろな国の友達がいて、みんなで集まって何かを食べる時、豚肉を食べないのは私だけですね。
カジ:私もだいたいはお弁当を持って会社に行くので、外食に行く回数は少ないです。お弁当は、野菜や魚のグリル、カレーが多いです。外食に行く時は、私の友達はみんな優しいので、私に合わせてくれて、私が食べることができる魚料理のお店へ行くこともあります。
私もお店の人に何が入っているか聞きます。聞くことでお店の人に迷惑をかけてしまいますが、皆さん親切に教えてくれます。すべての材料の成分がわからない時は、はっきりと「申し訳ございません、わかりません。わからないので避けたほういいですよ。」と言ってくれます。そういうきちんと正直に対応してくれるところが、日本の一番好きなところです。
ノザ:義理の兄が、前に日本に旅行で来たことがありました。その時に一番困ったことは食べ物でした。自分で作る分には、何が入っているかわかりますが、旅行中はそうはいきません。だから何を食べていいか困っていました。
カジ:そういう困った時には「おにぎり」。鮭とかツナマヨとか。日本に住むムスリムの中で、鮭とツナマヨは人気があります!この2つはムスリムの人は知っていると思います。
アフア:でも、ときどきツナマヨでも乳化剤が入っているものがあります。
カジ:どこのコンビニかは忘れましたが、以前ツナマヨを買って、なんとなく裏側を見たら、ツナマヨなのに材料に「豚」の文字が入っていたことがありました。何でツナマヨなのに豚が入っているんだ?!とびっくりしました。
アフア:多分、調味料の中に豚由来のものが入っていたのだと思います。
カジ:そこのコンビニのツナマヨは食べないように気を付けています。
― おにぎりが人気があるとは意外でした。自分で作ることが多いということですが、普段どんなものを作っていますか?
ノザ:私は和食を作ることがあります。「アルコール」や「豚肉」をいれなければいいので、インターネットで英語で書いてある和食のレシピ本を買って作っています。自分の国(ウズベキスタン)の料理を日本で作るのは難しいです。専用の鍋や油がなかったり、時間がとてもかかります。料理自体は簡単ですが、時間は大切ですから、特に東京では。勉強もしなくてはならないし。だから、だいたい和食を作ります。
アフア:インドネシア料理です。
カジ:私は、カレーですね。
■アフアさんとカジさんの普段の家での食事
> Vol.6『日本に住むムスリムの生活事情 』~ハラール編③~に続く
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